書籍紹介

英 正道著『トランプ登場で激変する世界』(アートデイズ、2017年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使)  本書は、第1部でトランプ登場により激変する世界のさまを詳述しているが、核心は、第2部、「外交の復権」と第3部「自立した日本外交と安全保障戦略」である。著者は、「どうすれば、二十年先に、日本が諸外国と相互依存のウイン・ウイン関係を維持し、豊かな國であり続けられるかを念頭にした安全保障戦略を描く」ことが本書の目的であるとしている。この目的の延長線…

國廣道彦著『経済大国時代の日本外交』(吉田書店、2016年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使)  本書の著者、國廣道彦氏は、病を得て退官する1995年までに、外務省中国課長、在米大使館経済担当公使、本省経済局長、内閣外政審議室長、経済担当外務審議官、駐インドネシア大使、そして駐中国大使と、日本外交の要所要所に在り、特に経済面で重要な足跡を残したが、その時期は、まさに日本の劇的とも言える高度成長期に当たっていた。本書は、そのドラマに重要な役…

枝村純郎著『外交交渉回想』(吉川弘文館、2016年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使) 読者には、まず本書のカヴァーに注目頂きたい。説明書きによれば、1990年7月27日、クレムリンにおける信任状捧呈式の写真とある。枝村大使が背筋をピンと伸ばし、頭を上げ、しかも、ニッコリ微笑を浮かべているところに注目したい。筆者にも経験があるが、天皇陛下の御信任状を任国の主権者に捧呈するという儀式は、矢張り相当に緊張するものである。相手に対する敬…

枝村純郎著「外交交渉回想――沖縄返還、福田ドクトリン、北方領土」(吉川弘文館、2016年)

小寺 裕子(前駐サウジアラビア大使夫人) 「外交交渉回想」などという堅苦しい題の本は私のような素人には睡眠薬代わりかと思いきや、これは下手な推理小説を凌ぐハラハラ,ドキドキものだ。読み始めたらやめられないのだが、ありがたいことに章ごとに話が完結しているので睡眠不足にはならない。 小説と同じく登場人物が実に生き生きと描かれている。著者は正義感に燃える熱血漢であり、いかにしたら難題…

阿曾村邦昭著『ミャンマー―国家と民族』(古今書院、2016年)

元駐ベトナム大使 阿曽村 邦昭  メコン地域に勤務、居住したことのある研究者や実務家の相互乗り入れの場としての 「メコン地域研究会」も創立以来8年半を超えた。 霞関会の会員で、この研究会の会員になっておられる方々も数名おられる。筆者は、この研究会の創立以来、会長のポストについてきたが、これまで、3・11以外には一度も休まず、毎月、例会を行ってきた。よく続いたものだと思う。 これ…

谷野作太郎著「外交証言録 アジア外交回顧と考察」(岩波書店)について

元駐ロシア大使 枝村 純郎 日中、日韓関係についての必読書 著者は1960年外務省入省から2001年退官するまでのほとんどを日中、日韓関係にかかわってきた。中国課長、鈴木総理秘書官、韓国公使、アジア局長、内閣外政審議室長、在中国大使などを歴任したからである。中国への政府援助の実施、天安門事件のほとぼり冷めやらぬうちの天皇の御訪中などの際には反対派の議員から「クビにしてやる」など…

田中 修 著『世界を読み解く経済思想の授業 』(日本実業出版社、2015年)

元駐中国大使 國廣 道彦  この本の著者 田中 修(たなか おさむ)氏は20年ほど前に、北京の日本大使館 経済部に参事官(財務担当)として4年間勤務して、中国経済の研究に取り組んだ。 帰国後、信州大学教授、東京大学客員教授などを経て、2010年より財務省財務総合政策研究所副所長に就任している。 その間、田中 修 氏は、中国経済の動向について一日も目を離すことなく、今日に至ってい…

J.ハインズ「宗教と開発」(麗澤大学出版会、2010年)を読んで(宗教抜きには、開発を語れない時代)

杏林大学客員教授 元駐バチカン大使 上野 景文  ジェフリー・ヘインズの「宗教と開発」は、「近代化、開発とは脱宗教化を意味する」として来たこれ迄の「常識」を根っこから覆してくれる大著である。キャッチフレーズ的に言えば、「宗教抜きには、開発を語れない時代が来た」ということだ。 そう、つい20-30年前までは、近代化が進めば進むほど、社会における宗教の地位が低下することは自明のこと…

米・中・ロシア 虚像に怯えるな ―元外交官による「日本の生きる道」』河東哲夫著 草思社、2013年 出版

元駐韓国大使 霞関会理事長 大島 正太郎  仕事の関係でTPPに関する論調あるいは各党の立場に接していた当時、具体的なTPP賛否のいずれの側にも、今まで経験してきたことのないほどの嫌米感情に触れて、何時からこんなになったのかと驚いた。(それまで約4年間、自分が国際公務員、しかも裁判官みたいな仕事、をしていたので政策当事者と直接接することをいわば忌避していた特殊な事情があったこと…

リー・クワンユー講演集」を読んで

元駐シンガポール大使 橋本 宏 2011年9月、シンガポールのCengage Learning Asia社から“The Papers of Lee Kuan Yew , Speeches, Interviews and Dialogues,1950-1990”が刊行され、同月末リー元首相出席の下、同地において出版記念会が開催された。 これは、1950年のロンドンからの帰国に始ま…