書籍紹介

枝村純郎著「外交交渉回想――沖縄返還、福田ドクトリン、北方領土」(吉川弘文館、2016年)

小寺 裕子(前駐サウジアラビア大使夫人) 「外交交渉回想」などという堅苦しい題の本は私のような素人には睡眠薬代わりかと思いきや、これは下手な推理小説を凌ぐハラハラ,ドキドキものだ。読み始めたらやめられないのだが、ありがたいことに章ごとに話が完結しているので睡眠不足にはならない。 小説と同じく登場人物が実に生き生きと描かれている。著者は正義感に燃える熱血漢であり、いかにしたら難題…

阿曾村邦昭著『ミャンマー―国家と民族』(古今書院、2016年)

元駐ベトナム大使 阿曽村 邦昭  メコン地域に勤務、居住したことのある研究者や実務家の相互乗り入れの場としての 「メコン地域研究会」も創立以来8年半を超えた。 霞関会の会員で、この研究会の会員になっておられる方々も数名おられる。筆者は、この研究会の創立以来、会長のポストについてきたが、これまで、3・11以外には一度も休まず、毎月、例会を行ってきた。よく続いたものだと思う。 これ…

谷野作太郎著「外交証言録 アジア外交回顧と考察」(岩波書店)について

元駐ロシア大使 枝村 純郎 日中、日韓関係についての必読書 著者は1960年外務省入省から2001年退官するまでのほとんどを日中、日韓関係にかかわってきた。中国課長、鈴木総理秘書官、韓国公使、アジア局長、内閣外政審議室長、在中国大使などを歴任したからである。中国への政府援助の実施、天安門事件のほとぼり冷めやらぬうちの天皇の御訪中などの際には反対派の議員から「クビにしてやる」など…

田中 修 著『世界を読み解く経済思想の授業 』(日本実業出版社、2015年)

元駐中国大使 國廣 道彦  この本の著者 田中 修(たなか おさむ)氏は20年ほど前に、北京の日本大使館 経済部に参事官(財務担当)として4年間勤務して、中国経済の研究に取り組んだ。 帰国後、信州大学教授、東京大学客員教授などを経て、2010年より財務省財務総合政策研究所副所長に就任している。 その間、田中 修 氏は、中国経済の動向について一日も目を離すことなく、今日に至ってい…

J.ハインズ「宗教と開発」(麗澤大学出版会、2010年)を読んで(宗教抜きには、開発を語れない時代)

杏林大学客員教授 元駐バチカン大使 上野 景文  ジェフリー・ヘインズの「宗教と開発」は、「近代化、開発とは脱宗教化を意味する」として来たこれ迄の「常識」を根っこから覆してくれる大著である。キャッチフレーズ的に言えば、「宗教抜きには、開発を語れない時代が来た」ということだ。 そう、つい20-30年前までは、近代化が進めば進むほど、社会における宗教の地位が低下することは自明のこと…

米・中・ロシア 虚像に怯えるな ―元外交官による「日本の生きる道」』河東哲夫著 草思社、2013年 出版

元駐韓国大使 霞関会理事長 大島 正太郎  仕事の関係でTPPに関する論調あるいは各党の立場に接していた当時、具体的なTPP賛否のいずれの側にも、今まで経験してきたことのないほどの嫌米感情に触れて、何時からこんなになったのかと驚いた。(それまで約4年間、自分が国際公務員、しかも裁判官みたいな仕事、をしていたので政策当事者と直接接することをいわば忌避していた特殊な事情があったこと…

リー・クワンユー講演集」を読んで

元駐シンガポール大使 橋本 宏 2011年9月、シンガポールのCengage Learning Asia社から“The Papers of Lee Kuan Yew , Speeches, Interviews and Dialogues,1950-1990”が刊行され、同月末リー元首相出席の下、同地において出版記念会が開催された。 これは、1950年のロンドンからの帰国に始ま…

上野景文著『バチカンの聖と俗』(かまくら春秋社、2011年)

元駐チェコ共和国大使 髙橋 恒一 本年7月末に出版された上野景文著「バチカンの聖と俗」(かまくら春秋社)は、15年程前から文明・文化についての論考を発表してきた著者が2006年から4年間にわたるバチカン大使としての体験と観察を基に書き下ろした意欲作です。著者によれば本書は、バチカンについての概説書でも単なる体験記でもなく、「文明論としてバチカンに迫ることを試みたもの」ですが、そ…

田中 修著「2011~2015年の中国経済」(蒼蒼社)」を読んで

元中国大使 国広 道彦 本書の目次だけ見ると役所の調書のように見える。しかし、少し読み進めると著者の鋭い分析を随所に見出す。 著者はまず中国のマクロ経済政策の決定過程を解説し、第12次五カ年計画(2011~2015年)の成立過程を解説し、その間に如何に情報を集め、計画内容を各部局、地方にまで議論させるかを説明する。その上で第12次五カ年計画についてその指導理念、主要政策の内容、…

「国際人のすすめ-世界に通用する日本人になるために」 松浦晃一郎著(静山社出版)」を読んで

静山社元科学技術協力担当大使元ユネスコ事務局長補松井 靖夫 松浦晃一郎氏が、日本の外交官40年余のプロフェショナルとしての経験とユネスコ事務局長10年の成功体験に基き、国際人として得られた成果と学んだ教訓を織り込んだ好著である。国際人をめざす前途有為な我が国の若い世代、彼らを育てようとする教育関係者、国際社会の舞台をみているジャーナリストと研究者には必読の書である。 本書は、ユ…