書籍紹介

佐野利男著『核兵器禁止条約は日本を守れるか』(信山社、2022年)

日本国際問題研究所理事長 佐々江賢一郎  本書は、核軍縮・軍備管理をめぐるこれまでの歩みを振り返りつつ、人類の目標としての核兵器廃絶と主権国家が抱えている安全保障上の要求との相克について、現場を経験した外交官の視点から分析し、今後我々がとるべきアプローチについて専門家としての率直な見解を述べ、提言を行っている。  とりわけ、昨今注目を集めている核兵器禁止条約について、近年の核軍…

松浦晃一郎著『アジアから初のユネスコ事務局長』 (日本経済新聞出版、2021年)

関場誓子(霞関会副理事長・聖心女子大学名誉教授) はじめにー日本の存在感低下への警告の書  本書は、40年にわたる外交官生活の後、2期10年にわたってユネスコ事務局長を務めた松浦晃一郎氏(以下著者)による人生の旅路の書であり、それと同時に国際社会で存在感を低下させつつある日本の現状に対する痛烈な警告の書でもある。 本書では、幼少時代を皮切りに、東京大学での学びを経て外務省に入省…

野口武著『デンマーク「希望の絆」』
(マイティーブック出版 2021年)

佐野利男(元駐デンマーク大使)  2011年3月11日、世界に衝撃が走りました。次々に家屋や構造物をなぎ倒してゆく津波の破壊力が映し出され、メディアの発達により、世界中の人々が震災を「疑似体験」したのです。更に、福島原発の水素爆発、陸自ヘリコプターによる放水の映像を多くの人々が固唾をのんで見守りました。成田空港に殺到する外国人、大使館の関西方面への移動など在留外国人の反応が危機…

井上勇一著『満州事変の視角』
(東京図書出版 2020年)

加来至誠(元駐ホンジュラス大使)  在カナダ大使館で御巫、菊地両大使の薫陶を共にうけた畏友井上勇一氏がこのたび新著「満州事変の視角」を上梓された。快著であり、まことに稀有な書である。  この書は、日露戦争から満州事変にいたる満州の情勢を、同地域の中心的在外公館であった奉天総領事館の館長を務めた8人の総領事(吉田茂を含む)及び1人の総領事代理の立場から俯瞰的かつ精密に捉えており、…

大島正太郎著『日本開国の原点: ペリーを派遣した大統領フィルモアの外交と政治』(日本経済評論社、2020年)

関場誓子(霞関会副理事長・聖心女子大学名誉教授) はじめに  「歴史は状況と個人とが織りなす錦絵である」 本書を読み終えてつくづく思い起こされるのは、五百旗頭眞氏による、この指摘である。 著者の大島正太郎氏は、米国への留学経験も豊富な元外交官で、サウジアラビアや韓国の駐在大使を勤めた他、ジュネーヴの国際機関日本政府代表部大使として多国間外交の最前線に立った経験も併せ持つ。それだ…

阿曽村智子著『国際交流のための現代プロトコール』の魅力(東信堂、 2017年)

上野 景文(文明論考家・元駐バチカン大使) (はじめに) 首脳外交全盛の今日、プロトコールの重要性を疑問視する人は少ないであろう。ただ、外交のプロの中にすら、プロトコールなるものは「外交技術」の一つであり、専門家に任せればよいと誤解している人がいる。これに対し、そのような認識は間違っており、理論的に言っても、実践論から言っても、プロトコールは彼らが思っているより遥かに「重く、深…

英 正道著『トランプ登場で激変する世界』(アートデイズ、2017年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使)  本書は、第1部でトランプ登場により激変する世界のさまを詳述しているが、核心は、第2部、「外交の復権」と第3部「自立した日本外交と安全保障戦略」である。著者は、「どうすれば、二十年先に、日本が諸外国と相互依存のウイン・ウイン関係を維持し、豊かな國であり続けられるかを念頭にした安全保障戦略を描く」ことが本書の目的であるとしている。この目的の延長線…

國廣道彦著『経済大国時代の日本外交』(吉田書店、2016年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使)  本書の著者、國廣道彦氏は、病を得て退官する1995年までに、外務省中国課長、在米大使館経済担当公使、本省経済局長、内閣外政審議室長、経済担当外務審議官、駐インドネシア大使、そして駐中国大使と、日本外交の要所要所に在り、特に経済面で重要な足跡を残したが、その時期は、まさに日本の劇的とも言える高度成長期に当たっていた。本書は、そのドラマに重要な役…

枝村純郎著『外交交渉回想』(吉川弘文館、2016年)

矢田部 厚彦(元駐フランス大使) 読者には、まず本書のカヴァーに注目頂きたい。説明書きによれば、1990年7月27日、クレムリンにおける信任状捧呈式の写真とある。枝村大使が背筋をピンと伸ばし、頭を上げ、しかも、ニッコリ微笑を浮かべているところに注目したい。筆者にも経験があるが、天皇陛下の御信任状を任国の主権者に捧呈するという儀式は、矢張り相当に緊張するものである。相手に対する敬…

枝村純郎著「外交交渉回想――沖縄返還、福田ドクトリン、北方領土」(吉川弘文館、2016年)

小寺 裕子(前駐サウジアラビア大使夫人) 「外交交渉回想」などという堅苦しい題の本は私のような素人には睡眠薬代わりかと思いきや、これは下手な推理小説を凌ぐハラハラ,ドキドキものだ。読み始めたらやめられないのだが、ありがたいことに章ごとに話が完結しているので睡眠不足にはならない。 小説と同じく登場人物が実に生き生きと描かれている。著者は正義感に燃える熱血漢であり、いかにしたら難題…