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谷野作太郎著「外交証言録 アジア外交回顧と考察」(岩波書店)について

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元駐ロシア大使 枝村 純郎

日中、日韓関係についての必読書

著者は1960年外務省入省から2001年退官するまでのほとんどを日中、日韓関係にかかわってきた。中国課長、鈴木総理秘書官、韓国公使、アジア局長、内閣外政審議室長、在中国大使などを歴任したからである。中国への政府援助の実施、天安門事件のほとぼり冷めやらぬうちの天皇の御訪中などの際には反対派の議員から「クビにしてやる」などと怒鳴られることも再三であったという。韓国との関係で特筆すべきは、所謂慰安婦問題への対応である。筆者は内閣外政審議室長として慰安婦問題についての1993年の河野談話を起案する。そのため入念な事前調査が行われ、外政審議室から調査団が訪韓し、元慰安婦の十数名から直接聞き取りを行った。その記録を当時の宮澤喜一総理に提出したところ、総理は半分くらい読んだところで「もう勘弁してくれ」と言って深いため息を漏らされたという逸話も書かれている。この問題は、日本人にとって、それくらいおぞましく恥ずべき事であったのだ。また、1997年の戦後50周年にあたって反省とお詫びを述べた村山総理談話も、総理直々の依頼によって、筆者が起案したのである。次々に起こるこれらの難問にたゆむことなく立ち向かっていく筆者の姿勢は感動を呼ばずにはおかない。しかし、特筆すべきは、その内容の重さにかかわらず、本著はきわめて読みやすく、ついつい読み進んでしまうことだ。それは、編者の3人の学者からの問いかけに筆者が答えるという形のため全文が会話調で滑らかに書かれているからであろう。霞関会会員をはじめ本省現役の皆様にも是非ご一読をお勧めしたい。