この傾向は2019年に入っても続き、アイスランドからアルフレズドッティル教育科学文化大臣、ヨハネソン大統領等の訪日が相次ぎ、2020年には両国共催で北極科学大臣会合が東京で開催される予定。
この様に二国間関係が急速に深まる状況下、日本がアイスランドから学ぶべき分野について、二つほど挙げておきたい。
【再生可能エネルギー大国】
一つ目は、再生可能エネルギーの活用である。アイスランドは一次エネルギー需要の85%を地熱と水力で賄い、残り10数%のガソリンを中心とする化石燃料の使用も、電気自動車等の導入により、近い将来ゼロにするという国家目標を立てている。実際、電気自動車の販売台数は急速に伸びている。
着任以来、既に複数回、各地の地熱発電所を視察する機会を得たが、その度に痛感するのは、自然の恵みが実に上手く活用されていることだ。地下から汲みあげた熱水と蒸気を、一方では家庭やビル・公共施設の暖房に使用し、また一方では発電に活用する。さらに一部の発電所では、排水をスパ・リゾートとして活用し人気を博している。この代表格が、日本でも有名なブルーラグーンだ。
実は、当国の再生エネルギー大国化には日本も少なからず貢献をしている。地熱発電所で使用されるタービン等の発電設備の殆どが日本製であり、その一部の調達には日本の国際協力銀行(JBIC)の資金が使われているのだ。
さらに、当国の地熱発電会社は国内だけに止まらず、アフリカやアジアでの事業への参画も加速させている。日本企業とのアジアや日本国内での協業の可能性も高く、その実現が期待されるところだ。
また、最近の新たな動きとして、日本企業を含む多くのグローバル企業が当国のクリーンな電気(電力)に熱い視線を注ぎ始めている。当国の電気はほぼ100%再生可能エネルギー(水力と地熱)から作られる為、大量に電気を消費する産業や企業にとって、環境負荷がゼロである電気はとても魅力的なのだ。
【ジェンダー先進国】
今一つの分野は、男女平等や女性の社会進出と言った分野である。当国は、毎年「世界経済フォーラム」が発表するGlobal Gender Gap Indexでジェンダー格差が少ない国として、11年連続1位に輝いているジェンダー平等先進国なのだ。
確かに、古くから、女性の相続権が男性と同一になった世界最初の国(1850年)、世界で最初に(民選)女性大統領が誕生した国(1980年)と言った実績を有し、今でも国会議員の約4割が女性、大学卒業生の66%が女性、女性の就業率80%以上、と言った輝かしい数字が並ぶ。
しかしながら、長くジェンダー問題に係わって来た女性運動家に言わせると「男女平等が肌で感じられる様になったのは、2000年に育児休暇法が改定され、夫にも最低3ヶ月間の育児休暇取得が義務付けられてからだ」とのこと。
この法律では、子供の出生後の育児休暇(有給)は夫婦合計で9ヶ月付与され、3ヶ月毎に夫婦が交替で休暇を取得、最後の3ヶ月は話し合いの上いずれかが取得する立て付けで、母親が全てを取得することは出来ないことになっている。現在、さらにこの育児休暇期間を12ヶ月に延長する法案も検討されており、承認されると父親・母親共に5ヶ月間、残りの2ヶ月を夫婦いずれかで取得することになる。
実際にこの育児休暇を取得した男性の話を聞いてみると「当国でも“育児は女性がするもの”との考え方が長く根強かったが、実際に体験してみて初めて育児の喜びを知ることが出来た」と言った声が多い。
この様に、男女格差の解消に関して世界をリードして来たアイスランドだが、その改善努力は止まるところを知らない。
実際、2018年1月には「男女平等法」が改正され、世界で初めて男女間の賃金格差を違法とする、所謂「同一賃金認証法」が施行された。これは、従業員25名以上の企業・組織に対し、男女間の賃金平等を実践していることを示す証明書を取得する義務を負わせるもので、違反企業には1日当たり最大500ドル前後の罰金が科されることになった。
そして、2020年4月には東京で第六回国際女性会議WAW!が開催される予定だが、そのキーノート・スピーカーの一人として当国のヨハネソン大統領が招待されている。