MENU
 

日本の少子高齢化・労働力不足と外交


在ベトナム大使 梅田 邦夫

 2016年11月の当地着任以降、驚いたことがいくつかあるが、最大の驚きは、日本の労働力不足が危機的状況になっている中で、日本から様々な方が、人材(労働者だけでなく、介護福祉士、ソフト・エンジニア等)を求めて間断なく来越されることである。

(1) 日本に住むベトナム人は、この5年間で5倍増の26万人(2017年末)、中・韓に次いで3位。内技能実習生は8倍増の12万人、2年前に中国を抜いて国別1位、留学生(多くは出稼ぎ目的)は9倍増、7万人で国別2位である。今やベトナム人の若者が、他のアジア諸国、日系人と共に、日本人の生活圏に居るのが当たり前の時代となり、日本経済を支えている。

(2) 残念なことに、ベトナム人の犯罪件数とベトナム人技能実習生の失踪件数は共に、国別1位である。ベトナム人犯罪の86%は窃盗である。その背景には、ベトナムの「悪徳送り出し機関」と日本の「悪徳日本語学校」、「管理団体」がつるんで、色々な名目で出発前の若者たちからお金を巻き上げ、百数十万円の借金を負わせて訪日させる実態がある。

 ベトナムでは、月給2万円程度の若者が百数十万円の資金を作るために、親戚から借金し、親も土地等を担保に資金を作る。親戚中の大きな期待を担って訪日するが、借金返済に追われる日々が続き、絶望する。その頃に、犯罪グループから万引きの誘いをうけるケースが多い。日本の刑務所に百名以上のベトナム人が服役中である。

(3) このようなことは、夢をもって来日する若者の人生を台無しにするのみならず、彼らの親戚の人生にも悪影響を及ぼす。当然のことながら、日本で搾取された若者や親戚の対日感情は悪化し、二国間関係への影響も懸念される。

(4) 問題は、ベトナムと日本双方にある。大使館として何ができるか、何をすべきか模索中であるが、実状の把握が不可欠との観点から次のような5つの取り組みを実施している。

① 第一に、労働力不足問題に関して日本から来る方には、必ず会って、直面されている具体的問題について話を聞くとともに、当地の実情(ベトナム人の若者が大きな憧れ、家族の期待を担って訪日している事等)を説明。会談内容はできるだけ電報にして東京に報告する。

② 当地の「日本語学校」や「送り出し機関」の現状を把握するため、日本語学校経営者、送り出し機関、そこで働く日本人から話を聞く機会を設けるようにしている。

③ 昨年3月以降、領事班は、留学ビザ申請者とのインタビューを実施し、書類(日本語N5の実力の有無)の真偽を確認している。その結果、昨年は約2割が偽造書類、今年になり偽造は半減している。同時に、副産物として、悪徳「送り出し機関名」と悪徳「日本語学校名」が浮かび上がり、日越関係当局に通報、監督強化を要請。繁忙期には、政務班や官房班も領事班を手伝っている。

④ 「悪徳送り出し機関」等は、日本に行けば仕送りも勉強も可能と虚偽情報を流布していることから、大使館は、正しい情報の広報を強化している。ベトナム関係当局と協力し、出張時のセミナー開催、フェースブック活用、雑誌への投稿等を行っている。

⑤ 弁護士事務所が、最近相談窓口をハノイ市内に設置してくれたことから、連携を強化している。

(5) 昨年11月、技能実習生に関する新たな法律が日本で施行され、滞在年数が3年から5年に延長、職種も介護職等が追加された。介護のビザ申請は、候補者が日本語を勉強中であり、そろそろ申請が出てくると思われる。但し、今年に入り、技能実習ビザ申請は、既に昨年の2-3割増しであり、介護ビザ申請量によっては、混乱が懸念される。

(6) 更に、今年6月、「骨太方針」で新たな在留資格の創設が決定され、来年4月の実施を目指して検討が開始された。遂に日本も本格的に外国人労働者を受け入れざるを得ない状況になったという事であろう。法務省は、体制強化のため、入国管理局の外局化を打ち出している。必要な措置と思われる。
この問題は、ベトナムのみならず、多くの東南アジア諸国、ブラジルなどの日系人の多い国の大使館では、共通の課題である。日本の労働力不足が危機的状況になった中、外国人労働者を国策として、受け入れることが決定された。外務省は、これまでビザ発給や犯罪対応の観点から、取り組んできたが、外交当局として「労働力不足と外国人労働力の導入」にいかなる貢献ができるか、体制も含めて、正面から取り組みを検討するタイミングを迎えていると思われる。

(了)