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ボツワナ粗描 ~日本ボツワナ国交樹立50周年を経て~


駐ボツワナ大使 尾西 雅博

 ボツワナはアフリカ南部の内陸国で、ダイヤモンドの産出国、野生動物の宝庫として欧米では名が通っていますが、まだ日本では馴染みが薄いと思います。そこで、本稿で、ボツワナとはどういう国か、課題は何かといった点についてご紹介したいと思います。

 なお、文中、意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることを予めお断りしておきます。

● ボツワナの位置

1.ボツワナ共和国の概略

(1)基本情報

 ボツワナ共和国は南アフリカ共和国の北隣に位置する内陸国で、南アフリカのほか、ナミビア、ザンビア、ジンバブエと国境を接しています。国土面積は日本の約1.5倍、人口は約220万人です。「ボツワナ」とはツワナ族の国という意味であり、国民の8割をツワナ族が占めています。ツワナ族、少数民族とも温和で、民族問題は生じていません。強いて言えば、カラハリ砂漠の奥地に暮らす、かつてブッシュマンと呼ばれていたバサルワ族が政府の進める特定の居住地への定住政策に反発し、摩擦が生じていますが、国を揺るがすような問題には発展していません。

 ボツワナの公用語は英語とツワナ語ですが、政府の刊行物は英語で表記されているなど、コミュニケーション上の支障はありません。教育はサブサハラ(アフリカ54か国中、地中海沿岸のアラブ系5か国を除いた、サハラ砂漠以南の49か国)にあっては高い水準で、識字率は国民平均で85%となっています。

 ボツワナはかつてイギリスの保護領でしたが、1966年に独立して以来、クーデターや内乱は一度も発生しておらず、治安は良好です。このことは平和に関する指数(暴力の恐れのないことを示す指数)でサブサハラ2位にランクされていることにも裏付けられています。道路網をはじめ基本的なインフラも整備されており、首都の町並みもすっきりしています。

 昨年は、ボツワナ独立50周年、そして日本ボツワナ国交50周年という節目の年でしたが、これを祝うため、在ボツワナ日本大使館も和太鼓公演、手作り神輿のパレードなど、様々なイベントを実施しました。

(2)政治情勢

 三権分立による統治が安定的に機能しています。

国家元首は大統領で、その下に副大統領と18人の大臣が置かれています。首相は置かれておらず、大統領が国政を掌握しています。

 大統領は、間接選挙で選任され、5年に一度行われる国民議会(一院制)の総選挙において過半数を得た政党の大統領候補が大統領に就任します。次期総選挙は2019年10月に実施されますが、現在の大統領は来年3月に任期満了を迎えます。そのため、1年半の隙間が生じますが、憲法の規定により大統領退任時に副大統領が自動的に大統領に昇格することとなっています。

 現副大統領は現大統領の信任が厚く、来年3月まで副大統領に在籍し、大統領を引き継ぐものと見込まれており、その翌年の総選挙の際にも、与党の大統領候補となるとの観測が広がっています。なお、現副大統領には昨年春の叙勲で旭日大綬章が授与されています。

 国民議会は小選挙区制により選出される57名の議員と大統領が選任する特別選出の6名の議員により構成されています。特別選出の議員は、政権安定を支える存在ですが、同時に大臣要員の側面を持っており、現在、6名中4名が大臣に就任しています。

 司法は3審制が採用されており、司法の独立は基本的に確立されています。2014年10月に国民議会議長の選出方法などを巡って政府側(法務庁長官)が高裁に違憲訴訟を提起しましたが、高裁、最高裁ともこれを退けています。

 このように国家運営が安定的であることを背景に、ボツワナは民主主義の制度的保障に関する指数(民主主義指数)では、サブサハラ第2位となっています。また、汚職の少なさに関する指数ではサブサハラで堂々の1位にランクされています。

(3)外交

 欧米主要国や近隣国との外交を重視していますが、日本との関係も良好で、親日の国と言えます。ボツワナは世界中に21の在外公館を有していますが、そのうちの一つが在京ボツワナ大使館で、同大使館は在ボツワナ日本大使館のオープン(2008年)に先だって、1997年に開館しています。なお、昨年のマシシ副大統領の叙勲に続き、今年も春の叙勲で2人受章していますが、これも日本ボツワナの友好関係の証しといえます。

 ボツワナはアジアにおいては、日本の他、インド、中国に大使館を設置しています。なお、ボツワナ政府は、昨年、南シナ海問題について国際的調停の尊重を訴える表明を発出しています。

 北朝鮮とは2014年に国交を断絶し、国連における北朝鮮非難決議に際しては共同提案国になってくれています。

(4)経済

 経済は、産出量、産出額とも世界第2位のダイヤモンドに支えられてまずまず堅調に推移しています。一人当たりGDPは約6、360ドル(2015年)と、サブサハラでは5位の水準となっています。また、ダイヤモンドに次ぐ稼ぎ手として、野生動物を中心とする観光資源が国を支えています。時折、日本のテレビ番組でも取り上げられているチョベ国立公園(野生の象で有名)やオカバンゴ(世界遺産)がその代表です。

 ボツワナは、サブサハラにおいて世界競争力指数は4位、企業活動のし易さに関する指数は3位と、ビジネス環境に関し上位にランクされています。国債格付けについては、今から15年ほど前、ボツワナの格付けが日本を上回ったとして話題になったことを覚えていられる読者もいると思いますが、今は日本を下回るものの、アフリカでは最も高い評価を受けています。

 その他、法人税の税率が世界平均を下回っていること、外国送金に対する規制がないことなど、投資環境は優れています。

2.ボツワナの課題

  以上のとおり、ボツワナは政治経済的に安定し、治安も良好で、「アフリカの優等生」の一員とされていますが、他方、課題も抱えています。

 課題の第一は失業問題です。ボツワナの平均失業率は20%で、特に若年失業率(15歳から34歳)は46%と高水準となっています。ダイヤモンド産業に頼る中で、他の産業、とりわけ製造業が発達していないことが最大の要因と考えられます。

 次に失業問題とも関連して、貧困が大きな問題となっています。世界銀行の定義による貧困者(1日1.9ドル以下で暮らす者)の割合を見ると、ボツワナは世界ワースト11位となっており、貧富の差を示すジニ係数も悪い方から世界3位となっています。一人当たりGDP の順位とちぐはぐな感がありますが、その背景には高い失業率、そして現金収入の乏しい自給自足型農業の存在があげられます。

 これら失業問題、貧困問題は政府の喫緊の重要課題となっており、その対策として産業多角化による雇用創出を図ることが求められています。

 なお、このような深刻な課題がある一方、社会不安は全くといって良いほど、起きていません。これは、国立医療機関での医療はほぼ無料、国公立学校での授業料は大学院まで無料、貧困者に対する食糧援助といったセーフティネットがあることと、親族相互扶助の伝統が根強いことが背景にあると思われます。

 ボツワナが抱える課題の一つにHIV / AIDS問題があります。

ボツワナでは、15歳から49歳までの人口のうち、22%が感染者で、これは世界第3位となっています。母子感染はほぼ解消されている一方、思春期以降の感染に歯止めがかかっていません。発病を防ぐ特効薬を政府が無料で支給していることで、今や死に直結する病ではなくなっていますが、その反面、緊張感が緩んでいるとも考えられ、政府は啓発活動に力を注いでいます。

 以上の他、水・エネルギーの一層の安定供給も長年の課題とされていますが、さらに将来をにらんだ構想として、南部アフリカ地域のハブ(交通、物流、教育など)を目指すという目標が暖められています。ボツワナはland-locked(陸地によって閉ざされた国)の国ですが、発想を転換して、land-linked(他の国と陸地でつながった国)の国であることを再認識し、それを生かそうというものです。

3.大使館の活動 ~ 結びに代えて ~ 

 最後に大使館の活動についてポイントをご紹介します。

 ボツワナは高・中進国に位置づけられているため、一般的な無償支援や円借款の提供は困難であり、援助の中心は技術支援と草の根無償支援となっています。技術支援の代表例としては地上テレビ放送のデジタル化の支援があげられます。地上デジタルに関しボツワナはアフリカで唯一、日本方式を採用した国であり、現在、その円滑な導入に向けて技術支援を提供しています。このほか、行政の基盤たる公務員制度の改革に関する支援も展開中です。

 また、草の根無償支援(人間の安全保障、文化)は、上記のとおり一般的な無償支援が困難なこの国にあって、国民の目に見える支援として、重要なツールとなっています。最近の取り組みとしては、幼稚園建設、障害児教育施設建設、柔道場建設、ソフトボール競技場整備などがあります。

 また、開発援助が限定される中、この国の発展を支える上でも、日本企業の誘致が肝要です。そのため、本年、当大使館とボツワナ投資貿易センター(当地の政府関係機関)の共催で日本企業向けのセミナーをボツワナで開催しました。投資環境に関する説明、工場見学、農場視察、個別企業との面談などがその内容ですが、日本、イギリス、フランス、シンガポール、そしてお隣の南アフリカから日本企業の参加を得て、投資先としてのボツワナに対する理解が高まったものと期待しています。

 最後に文化事業です。開発協力が限られている中で、日本のプレゼンスを高めるには文化事業が重要であり、活用可能な事業は極力実施するとの方針で取り組んでいます。最近では、「Japan Brand Program」により元陸上選手の為末大氏に訪問してもらい、講演や実技指導を実施してもらいました。

 ボツワナは、長年にわたり我が国との友好関係、信頼関係を築き上げてきた親日の国であり、国交50年の節目を経て、今後、両国の絆が更に強まるよう、当大使館として努めていく所存です。

(注) 本稿で紹介した種々のデータの時点は、概ね2015年、2016年となっています。

ジュワネン・ダイヤモンド鉱山
マスベ幼稚園