カリブの国々

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駐トリニダード・トバゴ大使 手塚 義雅

 カリブのトリニダード・トバゴにある大使館に赴任し、1年あまりが過ぎた。この在トリニダード・トバゴ大使館はトリニダード・トバゴと周囲のカリブ諸国9カ国(セントクリストファー・ネーヴィス,アンティグア・バーブーダ、セントルシア、セントビンセント及びグレナディーン諸島、グレナダ、バルバドス、ドミニカ国、スリナム、ガイアナ)を兼轄している。これらの国は、季候がよく風光明媚な国が多いので、欧米からの新婚旅行先になっていたり、退職者が永住したり、また、世界の有名人が別荘を持ち避暑に来たりしている。

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近代的なビルのある
ウォーターフロント地区(トリニダード・トバゴ)

 これらの国はラテン系の中南米諸国と違い、英連邦加盟国で英語を公用語としている(オランダ語を公用語とするスリナムを除く)。南米大陸にある面積の大きいガイアナ、スリナムを除いた島嶼国8カ国に限れば、面積は約8万4千平方キロメートル(東京都と群馬県を合わせた面積とほぼ同じ)、人口は約213万人(長野県の人口とほぼ同じ)で東京都と群馬県を合わせた土地に長野県の人たちが住んでいるイメージになる。なお、ガイアナとスリナムを合わせると面積は約38万平方キロメートル(日本の面積とほぼ同じ)で人口は約340万人(静岡県よりもやや少ない人口)となる。

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ダウンタウンの独立広場(トリニダード・トバゴ)

 大陸にあるガイアナ、スリナムを除く島嶼国は、回りが海に囲まれているためか、極端に暑くはならない。回りが海に囲まれているという点では沖縄とも似ている。沖縄には独自の琉球文化や美しい自然があるが、この点でも似ているかもしれない。これらの国々ではアフリカ系、インド系、その他ヨーロッパ系、中近東、中国系の人達が互いに影響し合いながら、独自の文化を創り出しており、首都から少し離れれば美しい海岸や自然を見ることができる。音楽に目を向ければ、スティールパンというドラム缶から作られた「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器」があるが、この楽器はトリニダード・トバゴで作られ、カリブの人々に愛されている。何回もこの楽器の演奏を聴いたことがあるが、繊細で美しい音色である。


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「MAUBY」
(モービー)

これらカリブ諸国はいろいろな面で共通点が多いが、違いもある。そのような共通点や違いを、各国を訪れながら見つけていく楽しみもある。たとえば、「MAUBY」(モービー)という庶民の飲み物はカリブ諸国の共通の飲み物だ。これは木の皮を煎じたものに、甘いシロップを加えたこの地域独特の飲みものである。飲むと苦みとともに甘みを感じる表現の難しい飲み物だが、慣れてくるとやみつきになる。
高血圧などにも効能があるとのことである。カリブの国であれば、どこのスーパーマーケットでも手に入るが、庶民の飲み物なので、高級なレストランで注文すると変な顔をされる。

ダブルスを食べている人.JPG
ダブルスを食べている人
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ダブルスを売っている店

もう一つ、ダブルスという、これも庶民の食べ物がある。独特のパン生地を使っていろいろな種類の豆を包み込んだ、トリニダード・トバゴ版豆ハンバーガーのようなものだ。トリニダード・トバゴでは簡単に見つけられるが、他のカリブ諸国ではなかなか見当たらない。主に朝食として食べるもので、売っている店によって味が異なる。このダブルスもやみつきになった。いろいろな店を歩き回って、おいしいダブルスを見つけるのも楽しみの一つになっている。

 カリブの人たちは連帯意識が強く、強い人的ネットワークがある。A国高官の夫人がB国籍の人だったり、B国大臣のクラスメートがD国大臣だったり、C国ビジネスマン夫人は医師でもあるE国大臣の病院で出産したと言うようなことはざらにある。また、現在国連加盟国は195カ国あるが、10カ国と言う数はその5%以上に当たる。それぞれの国は小国ではあるが、各種の政策をとるにあたっては共同歩調をとることも多い。このため国際場裏におけるその発言力は増加している。

 カリブの人達は日本について、高い技術を持っている国、礼儀正しい国民というように良いイメージを持っているが、残念ながら具体的な情報となると、知らないことが多いようだ。また、親日的ではあるが、同じ島嶼国である南太平洋諸国とくらべると、まだまだ関係を深める余地は大きいと思う(たとえば、日本と姉妹都市関係を持っている国はまだない)。発言力を高めているこれらのカリブの国々との関係強化は重要であり、このためその関係強化に努めているところである。(本稿に記載している内容は個人的見解に基づくものです)(2013年5月14日寄稿)