「The Golden State」豪州との固い絆

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                          在シドニー総領事 小原雅博

過去21年連続で経済成長を続けている国家がある。中国のことではない。私の勤務する豪州のことである。失業率や物価上昇率など他の経済指標を見ても、豪州は先進諸国の中で数少ない優等生である(豪州の四大銀行を合わせた利益率は先進国中トップ)。リーマン・ショック後の世界経済危機の中で景気後退を回避し、総崩れとなった先進諸国の中で唯一力強いファンダメンタルズを見せる豪州を、英誌「エコノミスト」(2011年5月26日付け)は、「The New Golden State」と賞賛し、こう述べた。

“Imagine a country of about 25m people, democratic, tolerant, welcoming to immigrants, socially harmonious, politically stable and economically successful; good beaches too. It sounds like California 30 years ago, but it is not: it is Australia today. Yet Australia could become a sort of California—and perhaps a still more successful version of the Golden State.”

ここで、これら諸点を日本と比較しつつ、少し検証してみたい。
①二大政党制の下で政権交代をしつつも、過去30年で首相は5人(日本は19人)という
  安定した民主主義政治
②「多文化主義(Multiculturalism)」を推進し、毎年12万人以上の移民と約1万3千人の
  難民を受け入れてきた多様で寛容な社会(2011年の日本の難民認定者数は21名、
  他に人道配慮で在留を認めた者が248名)
③1時間当たり最低賃金約1500円(東京は850円)など「労働者天国」と言われるほど
  恵まれた労働環境
④エネルギー自給率は238%」(日本は4%(原子力を含まず))、食料自給率は187%
 (日本は39%)という世界で最も豊かな鉱物・農産物資源に恵まれた先進国(豪州が
  日本のエネルギー・食料安全保障を支えている)
  そして、シドニーでは市内中心部から20分足らずで白砂のビーチを満喫できる。
  昨年、シドニーを始め4つの豪州の都市が「住みやすい世界の都市(Economic
  Intelligence Unit, 2012年)」トップ10に選ばれた。豪州は、OECDの幸福度指標
  でも第一位にランクされた。

そんな豪州には7万人以上の邦人(シドニーには3万人)から在留届が提出され、その過半が永住者として「the Golden State」の暮らしを楽しんでいる。シドニー勤務が長くなった私にも、英誌「エコノミスト」の豪州賛美が決して誇張ではないと感じられるようになった。 もちろん、そんな「the Golden State」にも問題がないわけではない。

① 上下両院で二大政党いずれもが過半数を取れない「ハング・パーラメント」
② アボリジニ(先住民)への政策の不徹底や一貫性の欠如、白人豪州人による
  法律・政治・経済トップの占有(「白豪主義」の残滓との指摘もある)、密航船に
  よる難民(「asylum seekers」)流入などを背景とする移民政策や永住権付与の
  厳格化
③ 賃金上昇と熟練労働者不足に加え、頻発する労使紛争
④ 資源セクターの高成長とそれ以外の製造業などの低成長という二極化を呈する
  「Two-Speed Economy」

こうした問題が新聞紙上を賑わし、政治の行方を左右する(今年の9月14日には総選挙が行われる予定で、政権交代の可能性がある)。日本企業も無関心ではいられない。
そんな豪州は、よく「ラッキー・カントリー」と呼ばれる。1964年にドナルド・ホーンが著した本のタイトルに使われたこの言葉は、その後豪州の俗称として国際的に広まった。ホーンは、地下資源という幸運に身を任せ、努力をしないで繁栄を謳歌する豪州人への皮肉を込めた警鐘として使ったが、いつの間にか言葉だけが独り歩きしてしまった。近年、中国による資源需要の急増がこの国に再び「資源ブーム」を巻き起こす中で、ホーンの警鐘を取り上げる識者もいる。豪州屈指のコラムニストのピーター・ハーチャー氏(シドニー・モーニング・ヘラルド紙記者)はその一人だ。

彼は、近著「Sweet Spot」で、私が彼との懇談で述べた言葉(I think of Australia as “a man lying on a bed of treasure.”)を引用して、「ラッキー・カントリー」病の悪弊を戒める。それは、別名「オランダ病(グレゴリーの仮設)」とも言われる。すなわち、鉱物資源輸出の増大が、①豪ドル高(米ドルとの為替レートは一昨年よりパリティーを上回る状態が常態化)につながり、同時に、②鉱業セクターの賃金を上昇させて、それが産業全体の賃上げに波及することで、製造業部門の国際競争力を低下させる。資源ブームの陰で進行する「Two-Speed Economy」は、ここ豪州で大きな経済・政治論争になっている。

豪州で販売台数トップを走り続けるトヨタ・オーストラリアは車生産工場を豪州国内に持ち、その生産の6割を中東市場に輸出するが、豪ドル高や賃金上昇などで経営環境は厳しい。それでも、年々拡大し、昨年110万台を突破した豪州乗用車市場はトヨタのグローバル展開において重要であり、生産拠点を維持するためにも昨年は350名の人員削減に踏み切った。これに反発した労組が労働党政権も巻き込んで政治問題化し、法廷闘争にまで発展したが、トヨタへの激励や支持の声も少なくなく、豪州トヨタの安田社長は豪州経済への貢献が認められ、昨年末、豪州で数少ない日本人叙勲者となった。

苦境の製造業だが、ブームの鉱山業も世界の成長センターとなったアジア、就中、中国の景気に大きく左右される。昨年夏、ファーガソン資源大臣が「資源ブームは終わった」と発言して騒ぎとなった(公邸で懇談した同大臣は資源分野での日本企業との信頼関係を強調した)が、その背景に中国の資源需要増加の鈍化による鉄鉱石や石炭の価格低下があった。営業利益の過半を資源事業で上げてきた日本の商社も大きな減益に見舞われた。ところが、昨年秋頃から中国の鉄鉱石需要が回復し、鉄鉱石価格が再び上昇に転じ、豪州の資源関連企業の収益や税収にも明るい見通しが戻ってきた。まさに中国様様である。

新聞紙面には中国記事が溢れ、あらゆる場所で中国経済が話題となる。報道量の多さで豪州にとっての重要性を計るなら、中国は日本の10倍は重要だということになる。永住者の方々からよく耳にするが、豪州でも日本の存在感が薄れてしまったことは否めない。

そんな情勢の中で、豪州政府は中国一辺倒ではなく、アジア太平洋国家としての立ち位置を重視する。昨年10月、豪州政府は「AUSTRALIA IN THE ASIAN CENTURY」白書を発表し、優先外国語に位置付けた中国語、ヒンズー語、インドネシア語、日本語の教育をすべての学生が受けられるようにするなどアジアの成長を取り込む国家戦略を明らかにした(学生の多くは英語しか話せない)。英国から遠く離れて地理的孤立(「距離の暴虐」)に苦しんだ豪州は今やアジアとの「距離の優位」を活かして「The Golden State」を目指す。

また、中国への警戒感も根強い。豪州史上初めて最大の貿易相手国が自由や民主主義を共有しない国家となったことの意味は小さくない。
昨年、私は「チャイナ・ジレンマ」という書を出版した。その中で、日本のみならず、豪州を始めとするアジア太平洋地域の多くの国が「大復興」する中国の経済チャンスと政治・安全保障リスクのジレンマに直面していることについて述べた。同時に、日本と豪州は超大国化する中国と冷戦後唯一の超大国としてこの地域の平和と繁栄に大きな役割を果たしてきた米国との狭間に位置する「境界国家」であり、日豪両国は米国との同盟関係を維持・強化しつつ、最大の貿易相手となった中国との関係も安定的にマネージしていかなくてはならないということを別の近著「境界国家論」で取り上げた。

その意味で、日本と豪州は似たような戦略環境に置かれていると言える。また、豪州は日本の重要な資源供給国であり、共に米国の同盟国として基本的価値を共有する。現在の日豪関係は日米関係や豪米関係と並び日豪両国にとってアジア太平洋における最も緊密な二国間関係であると言えるが、それに満足することなく、日本も豪州も互いを戦略的パートナーとして位置付けて一層の関係強化に努める必要がある。

幸い日豪間では幅広い分野で深く成熟した関係と交流が続いている。当地に勤務していて、豪州が色んな意味で大変に重要な友好国であることを日々感じさせられる。
日豪の外交関係は、一世紀以上も前に遡る。最初の外交使節は1896年タウンズビルに開設された領事館(1908年閉館)である。翌年には、横浜―シドニー間の定期航路が開かれ、シドニーに領事館が置かれた(最初の総領事は1906年に任命された)。豪州のカー外相は歴史好きで知られるが、ある時、私にこの日本との外交関係の始まりを語ったことがある。

100年を超える日豪外交関係史においては、戦争という不幸な時代もあった。しかし、時に日豪間の歴史を困難な時代を含め振り返ることが、連邦制宣言により一つの国家となって100年余りの国家にとっては必要であり、特別な意味を持つのであろう。
昨年は、日本軍のシドニー湾攻撃から70周年を迎えた。シドニー湾に侵入した日本の小型潜水艇が発射した魚雷がクッタバル号(兵の宿舎として使用されていたフェリーの船名であり、現在は海軍基地の名前となっている)に当たって、21名の犠牲者が出た。昨年幾つかの記念行事が行われ、多くのメディアが取材する中で私も招かれ出席したが、そこに日本への批判めいた言辞や雰囲気はまったく感じられなかった。
国境を越えて人間の高潔さや勇気を称え、家族の絆を見つめ直し、国家とは何かを問い、平和の大切さを噛みしめる時間的空間があった。私は、そうした場で次のような思いを述べた。

“At that time, great kindness and integrity was demonstrated by Australians when the Japanese sailors who died in the attack were treated so honorably and given funerals with full naval honors. I myself was very moved when I learnt of this fact.”
“As this commemoration makes us reflect on the past, it also makes us reevaluate the importance of personal integrity, the preciousness of family ties, the meaning of nation, and the value of life and death. I believe that our two nations can share these deep thoughts and convictions.
This belief drives me as Consul―General of Japan to work ever more closely with our Australian friends to build even stronger ties between our two nations.”

 1942年の日本軍の空爆を受けたダーウィンや1944年の日本人捕虜集団脱走事件が起きたカウラなどでも毎年慰霊式典が行われ、管轄地域の総領事として出席する。
移民の国豪州は多文化主義を掲げる多民族国家であり、様々な顔と文化を持つ人々が豪州人としてのアイデンティティーを模索する若い国家である。だからこそ長い歴史を持つ日本の伝統や文化に強い関心を示す人が少なくないし、自らの歴史を豪州の証として大切にする。

そんな機会に立ち会う度に、世界の中での日本という国家の存在、そして歴史の流れの中での日本人としての関わりが問われているのだと感じ、それにどう答えるべきかと煩悶する。
東日本大震災では豪州の多くの方々から激励や支援を頂いた。ギラード首相は、被災地を訪れた最初の外国首脳となった。NSW州の救助隊は氷点下の中で懸命な捜索活動に当たった。様々なチャリティー・イベントでお礼を申し上げたが、震災1周年に際して感謝の気持ちを表すべく主催したレセプションは日豪の心が一つになった素晴らしいものであった。

昨年は、もう一つの重要な記念行事がシドニーで開催された。50周年を迎えた日豪経済合同委員会である。豪州でも中国やインドの目覚ましい経済成長が世間の目を引きがちであるが、会議には双方から計330名の経済人が集い、ギラード首相やオファーレルNSW州首相の力強いスピーチもあって、日豪関係が相互信頼を基礎とする成熟した関係にあることを印象づけた。選挙公約であった中国とインドへの訪問を先行させたオファーレル州首相も、スピーチの中で私の勧めで今年訪日することにしたと発表してくれた。中国やインドの市場が拡大する中で、日本への関心をどう繋ぎ止め、そして新たな経済関係をどう切り開いていくか、今能動的な経済外交が求められていることを痛感する。日豪経済連携協定(EPA)の速やかな締結はその一つである。

過去半世紀のほとんどの期間、日本は豪州にとっての最大の貿易相手国であった。そして、日本との貿易は今も豪州に最大の貿易黒字を計上している。また、日本は他のアジア諸国を遙かに上回る対豪投資を行ってきた。在シドニー総領事館が管轄する北部準州には、一昨年、在豪日本商工会議所に声をかけて30数名が参加する官民合同経済ミッションを立ち上げ、北部準州政府との経済対話を行った。昨年には、その州都ダーウィンにおいて国際石油開発帝石(INPEX)が日本企業の対豪投資として(そして恐らく対世界投資としても)最大となる340億米ドルに上るLNGプロジェクトを立ち上げ、私もその署名式に出席した。日本と北部準州との関係は経済を中心に急速に進展しつつある。 昨年末には、真珠業を通じて歴史的に日本との関係が深いパスパレー社の御曹司が名誉総領事に就任した。国際交流基金シドニー事務所の協力も得て文化行事にも力を入れている。アジア太平洋の戦略環境が変化する中で、オバマ大統領が「米豪同盟深化のために最適の場所」と呼んだダーウィンに、日本はしっかりと足場を築きつつある。

人口が増加し、経済が成長を続ける豪州への日本企業の投資とビジネス活動は多様化している。資源分野での投資は続いているが、近年は食品、飲料、機械、発電、水、工学、住宅開発、保険、不動産、金融など広い分野で積極的な投資活動が展開されており、一昨年は第一生命の豪州保険会社買収が話題となった。私もキリンの飲料品工場、積水ハウスの住宅開発エリア、三菱電機の電車及び発電設備工場などを視察させて頂いたが、製品の質やサービスの高さは豪州の日本企業への信頼につながっている。また、BISの調査では、2012年上半期だけで、日本の銀行はユーロ危機に喘ぐ欧州の銀行の撤退を穴埋めする形で137億米ドルもの融資を実施し(INPEXの投資はまだ含まれていない)、存在感を高めている。国有企業を中心とする(「国家資本主義」)中国の投資への警戒感がある中で、基本的価値を共有し、半世紀に亘る企業人同士の信頼関係に支えられた日豪経済関係は旺盛な需要のあるインフラ、消費財、及びサービス分野への日本企業の投資を促すとともに、中間層の増大による市場拡大が続くアジアにおいて日豪企業の共同プロジェクトの模索も始まっている。

また、日豪両国は重要な経済パートナーであるのみならず、戦略的パートナーでもある。それは、中国台頭によるアジア太平洋地域のパワーバランスの変化の中で重要性を増している。日本が外務・防衛閣僚協議(2+2)を開催している相手国は米国と豪州だけであり、昨年シドニーで開催された日豪2+2では、対中関与政策や南シナ海問題から共同訓練や国際協力など協力内容の具体化まで積極的な戦略対話が行われた。安倍政権成立後の外相の初外遊先には、戦略的重要性を増すASEAN諸国と並んで、豪州も選ばれ、シドニーで外相会談が開催された。平和維持活動や災害援助を含めた安全保障分野での協力も強化されてきた。

国会議員や防衛関係者間の相互訪問も積み重ねられてきており、既に大きな信頼関係が築かれている。こうした日豪両国のパートナーシップは、日豪にとって「win-win」であるのみならず、アジア太平洋地域の平和と繁栄にも資するという意味において、「win-win-WIN」である。多国間主義に力を入れる「創造的なミドルパワー」(2012年5月の日本記者クラブでのカー外相の発言)豪州と共に、同盟国たる米国と連携・協力しながらこの地域の平和で繁栄する秩序作りに汗を流さなければならない。EAS、RCEP、APEC、TPPをそうしたパートナーシップを体現する枠組みとして活用すべきである。

そうした中にあって、捕鯨やイルカ漁の問題が豪州の国民感情に絡む微妙な問題として両国関係に影を投げかけてきたことは残念でならない。先般の日豪外相会談でもカー外相から話が出た。捕鯨問題が日豪関係全般に影響を与えないようにするとの基本的認識は共有しつつも、豪州側としては捕鯨に対する厳しい国民感情を背景にこの問題にまったく言及しないというわけにもいかないのであろう。また、豪州はこの問題を国際司法裁判所に提起しており、本年後半にも口頭弁論の審理が行われる予定である。日本の調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で認められた正当な科学調査であり、合法的な活動ではあるが、豪州政府はそれが国際的な義務に反すると考えており、世論も反対一色である。先日、本官公邸でJET(外国語青年招致事業)の同窓会を開催した際に、日豪間の交流や課題について率直な意見を求める無記名アンケートを実施した。

出席者全員が親日家であることは疑問の余地がなかったが、こと捕鯨については厳しい意見が多かった。当地の日本企業の一部からは、捕鯨がビジネスにも微妙に影響しているとの声も届く。情報化の時代、国家や国民のイメージが相手国の消費者の行動に影響を与えることもあるだろう。中国との差別化において基本的価値の共有を強調すればするほど、捕鯨の問題をめぐる対日世論にどう向き合うべきか、理屈を超えた手探りのパブリック・ディプロマシーが続く。

それでも、基本的には豪州国民の一般的な対日感情は良好である。その基礎には、長年に亘り積み重ねられてきた人と人の交流がある。日豪間には、6つの姉妹州県と103の姉妹都市があり、その第1号となったNSW州リズモア市と奈良県大和高田市の姉妹都市交流50周年を迎えた本年は、「日豪観光交流年」として位置付けられている。8月の50周年に向けて、CLAIR(財団法人自治体国際化協会)やJNTO(日本政府観光局)のシドニー事務所と一緒になって記念行事を行うべく準備している。また、姉妹校は数え切れないほど存在し、驚くほど色んな場面で日本語を流暢に話す豪州人に出会う。日本の高校に交換留学して青春の一時期を日本で過ごした親日家達である。ちなみに、日本語を学ぶ豪州人の数は、人口比で世界トップクラスである(但し、近年中国語や韓国語の勢いに押されており、日本語教育支援要請の声も高まる)。個人的信頼関係に支えられた日豪経済関係の成熟度はこうした半世紀に亘る人と人の絆の蓄積にあるのだと知って、心が熱くなる。

昨年秋、日本サッカー界をリードしてきた小野伸二が豪州の創設1年目のプロサッカーチーム・ワンダラーズに移籍してきた。下馬評の低かったワンダラーズであるが、小野の加入によってあれよあれよという間に優勝戦線に躍り出た。シドニー西部地区をホームとするワンダラーズのサポーターを中心とする熱狂ぶりは大変なものである。チームの司令塔としての小野伸二のプレーがここ豪州において多くのファンを魅了し、日本のイメージをも高めていることは間違いない。先日、公邸でのバーベキュー・パーティーに招いて異国での活躍を労った本官に対し、小野選手は「日本人のすごさを感じてもらえるようなプレーができるよう頑張りたい」と答えた。その時の爽やかな笑顔がとても印象的であった。

重層的に発展してきた日豪パートナーシップは、その成熟度において他のアジア諸国の追随を許さない。しかし、それも先人たちの弛まぬ努力があったからであり、この先も変わらず続いていくと当然視してはならないと思う。日本にとって大切な友邦である豪州との関係を磐石なものとしておくことが日本を取り巻く内外情勢に鑑みても極めて重要であることは論を待たない。新興国重視が叫ばれる中で、豪州は往々にして欧米先進国と一緒くたに取り扱われてしまいがちである。今こそ豪州の経済的・戦略的価値を改めて評価し、日豪関係の強化に高いプライオリティーを置いて取り組まねばならない。
3年足らずの勤務では豪州を十分に理解したとは言えないかもしれないが、以上の「豪州便り」はシドニーの地から日本とアジアを見つめる中で豪州との関係に携わってきた者の思いを書かせて頂いた(本稿は筆者の個人的見解であることをお断りしておく)。
(了)  (2013年2月18日寄稿)