伸び盛りの国カタールと日本2

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駐カタール大使 門司 健次郎

2. 日カタール関係
日本とカタールは単なる貿易パートナーに留まりません。実は,カタールの発展の基盤であるLNG産業を築いたのが日本なのです。欧米が採算性等から尻込みする中、日本は官民を挙げてカタールとともにLNG開発に取り組みました。90年代に中部電力が長期契約を結んだお陰で開発が進み、多くの日本企業がそれに携わりました。97年の初のLNG輸出は全量が日本向けでした。その後欧米の参加もあり,2010年末にはLNG生産能力7700万トンを達成し、全世界の約3分の1を占める世界一の生産国、輸出国となりました。近年,日本への輸出量は700万トン強と全体の約1割に低下しましたが、日本は、カタール発展の最大の恩人としてカタールの指導者層から感謝され、信頼されているのです。
東日本大震災後の電力事情への懸念を受け、外国人が先を争って日本から脱出しようとしていた3月16日にカタールガスCEOが来日し,年間対日輸出量の6割近いLNG400万トンの追加供給が合意されました。これだけの量を追加的に提供できるのはカタールのみです。また、1億米ドル(約82億円)の復興支援も表明されました。これらの支援は、世界でも最大級のものであり、ハマド首長の強いイニシアティブによるものです。
しかし、残念なことに、近年、日本のプレゼンスは低下しつつあります。依然としてカタールの最大の貿易相手国とはいえ、日本のシェアは減少しています。カタールがまだ貧しかった時代を知っており、日本とともにLNG開発に苦労した世代が次第に退き、小さいときから豊かな暮らしに慣れ、多くが欧米で教育を受けた若い世代がこれに取って代わっていることも心配の種です。

 また、世界がワールドカップ2022に向けた大型インフラ整備等への参画に本腰を入れている中、日本は出遅れています。カタールは、ワールドカップを、エネルギー中心の経済を多様化させる契機と捉え、巨額の資金を空調付きスタジアム12個,鉄道,地下鉄,港湾,空港、橋梁、ホテル等の建設に投入する予定です。
日本の建設会社は、ドバイ始め中東での苦い経験があり、また、震災後の復興需要もあって、一部を除き、進出には必ずしも積極的ではありません。是非とも多くの日本企業にこの大事業に参画してほしいものです。
 更に、カタールと諸外国との間では首脳レベルが頻繁に往来しており、多くのビジネス案件がトップダウンで決定されている中、日本の要人の来訪は大きく見劣りしていました。

そんな中、両国は本2012年に外交関係樹立40周年を迎えました。年明け早々、閣僚級以上では5年振りとなる玄葉外相の訪問、日カタール議員連盟一行の訪問、国交相政務官の訪問と、1週間に3件もの政治レベルの訪問が実現しました。

40周年を祝うことについては,カタール側も大いに乗り気です。ハマド首長の次女のマイヤーサ・カタール美術館庁総裁の主導により,多くの関係省庁・機関と日本大使館からなる委員会が設けられ、「カタール日本2012」プロジェクトが発足しました。ロゴ、プロモーションビデオも出来ています。
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「カタール日本2012」のロゴとTシャツも作成。(1月)

この下で、年初より、インフラ・水セミナーやエネルギーフォーラムの開催、ドーハ・フード・フェスティバルへの唯一の大使館としての特別参加、日本を対象とした大規模チャリティ・イベントの開催とそこへの被災地の子ども40名の招待、村上隆展開幕、林英哲和太鼓公演(中東初演)、服部真湖和装講演・デモンストレーション、復興写真展、復興レセプション、ポップカルチャー講演会など一連の行事が続いており、日本の存在感を大いに高めています。これに呼応するように現地の学生有志がアニメカタールイベントを企画しました。 

飛ぶように売れるマンガやコスプレイヤーが目立った会場は、とてもカタールの光景とは思えませんでした。これからも、月例日本映画上映会、日本語スピーチ大会、松井誠一座公演、和楽器と現地楽器のコラボレーション、ドーハ国際映画祭での日本映画特集、ドーハ国際図書展へのゲスト国としての参加等、年末まで様々な催し物が行われます。

フードフェスティバルでカタール人も餅つき (2月)

チャリティイベントで釜石市立唐丹中学校の生徒たちによるパフォーマンス (2月)

招待された被災地の生徒 真ん中は松浦前ユネスコ事務局長 (2月)

林英哲和太鼓公演での挨拶 (2月)

林英哲和太鼓公演(2月)

服部真湖和装講演・デモンストレーション(2月)

復興写真展 クワーリ文化相を案内 (3月)

盛況のアニメカタールイベント (3月)

大人気のNARUTO (3月)

初音ミクもいました (3月)

40周年関連行事は、文化のみに限られません。経済、外交・安全保障等を含め、幅広く日本を発信していくつもりです。また、カタール日本2012は、震災後にカタールから頂いた寛大な見舞いと支援への感謝を表明する機会とも考えています。これらを通じ、日カタール関係が更に発展していくことを期待しています。 長くなりましたが,カタールについて少しでも知っていただけたら幸いです。(寄稿2012年4月16日) ※なお、本稿における見解は筆者の個人的なものです。