普天間飛行場問題に真剣な対応を

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元沖縄担当大使 橋本 宏

在沖縄米軍基地の負担軽減が野田内閣にとって最優先の政治課題になる見通しであるとの報道が、この2,3日の間、主要紙を賑わせている。野田総理大臣は、先ずは政府部内の早期の意思統一が重要である、との基本的立場を取っている由。歓迎である。今度こそ政府と沖縄県との間で、パフォーマンスではない、実質的な対話が行われることを期待したい。
他方、普天間基地移設問題を巡る政府と沖縄側との意見の隔たりは非常に大きく、その溝を埋めることは容易ではない。元沖縄担当大使の経験を踏まえ、政府と沖縄県に対し次の要望を行いたい。

先ず政府に対しては、

  1. 沖縄側に最後通牒を突きつけるような態度は絶対に避けるべし。
    “それでは普天間飛行場の固定化が進むだけ”云々といった「恫喝」は 無用である。
  2. 基本的立場の維持と応用問題への柔軟な対応を軸にし、首尾一貫した対応をしめすべし。腰砕けは最悪である。
  3. 鳩山内閣発足直後から2011年5月の日米合意に至るまでの間、如何なる 理由で自民党連立時代の普天間問題への対応ぶりの変更を希求し、また、如何なる理由で最終的には自民党時代とほぼ同様の対応ぶりに戻った かについて、その「混迷と変遷」の経緯を沖縄側にきちんと説明すべし。沖縄はこれまで「蚊帳の外」に置かれていたことを忘れてはならない。 
  4. 同様の説明を自民党にも行い、その上で、日本の国益の観点から年5月の日米合意の尊重につき、同党の賛同を求めるべし。
  5. 上記(3)及び(4)を経た後に、沖縄側との間で正式かつ真剣な対話を開始すべし。  

沖縄県知事に対しては、上記に関して政府の真摯な対応ぶりが理解出来る場合には、前提条件を設けることなく、政府との間の正式な対話に応じることを、私は要望したい。

安全保障といった日本の基本的国益に係る課題に対する総理大臣の役割は、日本全国民の立場を踏まえた上で、また、沖縄県知事の役割は、沖縄県民全体の立場を踏まえた上で、これ以上の譲歩を相手側から勝ち取ることは困難であるとの共通認識を形成するまで真剣な対話を行い、その結果を国民及び県民に訴えることにある。両者共に、決して政府及び県内部の個々の利害に囚われた対応をしてはならない。普天間問題は、政府にとっても沖縄県にとっても、それぞれの最高責任者が力を出し尽くすところまで詰めて行かなければ解決は見えて来ないことを、心に銘記すべきである。

(9月10日寄稿)