ナショナル・デー祝賀レセプション 今昔
外務省参与・和歌山大学客員教授 川原英一
7月上旬、駐日エジプト大使御夫妻から御招待を頂き、同国ナショナルデー・レセプションに出席させて頂きました。
元首の御生誕日や独立記念日などを祝うナショナル・デー行事は、各国大使館が毎年行っています。コロナ禍にあった過去約3年は、こうした行事が中止されており、昨年末頃からこの行事を行う大使館はあったものの、感染対策のためマスクを着用しての、簡素な形式のレセプションとする例が見られました。
ナショナル・デー行事で今も記憶に残るのは、2013年から16年末までのグアテマラ在勤時の、米国大使館での行事でした。その当時の米国大使の御意向と思われるのですが、ジャズに関係の深い米国の都市を毎年テーマにし、ニューオリンズやシカゴなどを選んで、それぞれの都市に相応しいジャズの生演奏があり、また、美味しいハンバーグ・ホットドッグが供されていて、楽しませて頂きました。大リーグのシカゴ・カブスのユニホームを使って合成写真を作ってくれるコーナーもあり、とても人気のブースでした。
大使館によるナショナル・デー行事は、相手国の事情に合わせて、ナショナル・デー当日ではなく、それよりも前倒して行われることも多くあります。私がグアテマラで勤務した当時、我が国の場合、現上皇陛下が天皇陛下として御在位中であり、お誕生日12月23日が日本のナショナル・デーとされていましたが、キリスト教徒が多いグアテマラでは、12月23日よりも前、すなわち、11月末から12月初めの間に同行事を主催していました。12月に入ると、政・財界、政府トップの方々の多くは、クリスマス休暇などで首都には不在となるとの事情があったためです。一方で、大使公邸で全てのお客様を迎えるのは無理なので、大人数が収容可能で、行事に相応しいサービスを提供するホテル会場を早めに抑えておく必要がありました。そうした会場には限りがあり、他国のナショナル・デー開催日とも重ならない日時を選び、下見をした上で、半年以上前には予約を入れていました。
日頃のお付き合いを大切にしていますと、嬉しいことに、喜んでナショナル・デーに参加してくださる方々が年々増えてきます。お客様の人数が多くになるにつれて、公邸料理人一人では対応しきれないので、ホテル側が提供できる料理との組み合わせになり、事前の打ち合わせやホテル料理の味見の機会も必要となります。
当日は、日本料理や日本酒の試飲コーナーをアレンジしてもらい、数多くのゲストの方々に喜んで頂きました。また、日本企業製品のブースも設置してもらいました。レセプションでの来賓挨拶や乾杯には、現地で認知度が高く、日本に好意的な副大統領もしくは外務大臣など閣僚クラス、経団連会長などに御登壇をお願いしました。主催者である私の挨拶ではさまざまな話題を織り交ぜながら、同時に、多くの方々の御尽力により、日本との間で長く良好な関係が築かれてきたことを具体的に伝えるように心がけていました。一部企業のご協力による、日本の美しい景色を背景に自分の写真と合成して、翌年カレンダーを作るブースは大盛況でした。
さて、 冒頭にご紹介したナショナル・デー祝賀レセプション会場である駐日エジプト大使館には、時間に正確な日本での行事ということから、開始予定の午後6時半には既に多数の方々が参集されており、レシービング・ラインでゲストをお迎え下さったモハメド・アクバクル駐日エジプト大使や来賓御挨拶が予定時間通りに始まりました。
冒頭の両国国歌演奏に続く、同駐日大使の御挨拶では、エジプトは国際海運の一大拠点として重要な役割を果たしてきていることや、日本の協力で建設中の大エジプト博物館(GEM)が来年にオープンするのを心待ちにしていることが紹介されました。日本側来賓の元外務大臣の河野太郎デジタル大臣からは、同じ価値観を有する日本とエジプトが、法に基づく国際秩序の維持と持続可能な発展に共に協力していくことを期待する、ウクライナへのロシア侵略によりウクライナからの小麦・穀物の輸出が停止して、食糧輸入に頼る両国は被害を受けている、来年、エジプトを私的に是非訪問したいなどの御発言がありました。最後に、山田賢司外務副大臣から、日本は、エジプトに対してインフラから教育・文化まで広範な分野での協力をしてきており、今や両国の関係は戦略的連携に進化しているとの御発言がありました。
エジプト大使館の建物内にはツタンカーメンのレプリカなども展示されていて、興味深く、又、参加者は美味しいエジプト料理のブッフェを楽しんでいました。モハメド・アクバクル大使には、後日、御礼のメイルを送らせて頂きました。
エジプトのナショナルデー・レセプション会場内では、エジプト大使御夫妻はじめ同大使館員のおもてなしの様子が感じられました。特に大使夫人がゲスト、お一人お一人に、お気遣いをされていて、とても雰囲気の良いレセプションでした。グアテマラ在勤時の自らの経験と重ね合わせ、懐かしく感じさせて頂けた、良い祝賀レセプションでした。
(令和5年7月19日記)