ウクライナ侵攻から1年(英米メディアの視点)


外務省参与・和歌山大学客員教授 川原英一

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎える2月24日の直前、バイデン米大統領が20日にウクライナを電撃訪問し、翌日にはポーランドを訪問して、ウクライナが必要とするかぎり米国は支援する意図を表明している。プーチン・ロシア大統領は、21日、モスクワでの年次教書演説の中で、ウクライナ紛争は西側諸国が始めたものであり、ロシアはウクライナでの軍事行動を継続する意図を明らかにしている。

 また、ロシアと制限なき協力関係にある中国の王毅・共産党政治局委員(前外交部長)は、2月17-19日に独で開かれたミュンヘン安全保障会議に出席、その後、モスクワでプーチン大統領と会談した他、中国外務省は24日、ウェブサイトに12項目の和平案を掲載し、両国に紛争の「政治的解決」を求めた。ウクライナ侵攻から1年の時期に、今後のウクライナを巡り、米、ロ、中国による活発な外交が繰り広げられた。

 これらの動きについて、英米メディアが「ウクライナ侵攻から1年」の特集を組んでおり、特に、米主要紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、英エコノミスト誌、香港サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)紙などは、日本であまり報じられない、興味深い視点から報じている。英米メディアの注目点について、筆者の個人的感想も織り交ぜながら御紹介したい。

ロシアの侵攻直前、バイデン政権の情勢判断

 米有力紙WSJが「ウクライナは、今や(ロシアと)西側諸国との戦争に(Ukraine Is the West’s War Now)」との見出し記事(※注1)の中で、昨年2月にロシアがウクライナへ侵攻する直前の情勢をバイデン政権がどう判断していたか報じている。

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻がはじまる2日前、2月22日、ウクライナのクレバ外相が訪米して、ホワイトハウスでバイデン大統領や同政権高官に迎えられた。クレバ外相は、当時を振り返り、ウクライナはステージ4の末期ガンと診断された医師達に取り囲まれる患者のような気持ちだったと同紙に語っている。

 米欧同盟国側は、ロシアによる侵攻は不可避、同侵攻を防ぐことは出来ない点で見方が一致していた。バイデン政権は、ロシアがウクライナを数日内に占領し、ウクライナ国家は崩壊すると予測して、在ウクライナ米大使館は閉鎖し、米国人をウクライナから避難させていた。

 ホワイトハウスでのクレバ外相との会談で、米政権側から、ロシアによるウクライナの早期占領を前提に、ゼレンスキー大統領の国外避難へ言及があり、数週間前に米国がウクライナへ供与したジャベリン対戦車ミサイルやスティンガー対空ミサイルなど兵器は、ロシアによる占領後、反乱に必要な小集団ウクライナ人向けの武器供与と位置づけ、他方、通常の戦争遂行に必要な重火器についてのウクライナの要請を断わっている。併せて、バイデン政権は、ロシアに対する経済制裁の準備に入っており、米欧同盟が軍事的手段でウクライナの滅亡を回避しようとして失敗した、との印象を与えないよう慎重に進めていた。

 しかし、ロシア軍の侵攻から1年経過後の状況をみれば、ウクライナ戦争は、ロシアと西側諸国の戦いになっている。米・欧州諸国・カナダが、ウクライナに約1200億ドル(約16.2兆円)相当の武器・その他支援をしており、高機動ロケット砲(ハイマーズ等)、戦車といったより高度な兵器も供与している。

 このような大規模支援をしても、プーチン大統領の(ウクライナのロシアへの併合の)野望を阻止できなければ、世界における米国の信頼性を損なうばかりでなく、西側諸国の未来に難題を提起するのではないかと同紙は指摘する。

(※注1:https://www.wsj.com/articles/ukraine-is-the-wests-war-now-5d468bdb

米大統領のウクライナ電撃訪問

 今年2月20日にウクライナを電撃訪問したバイデン大統領は、ゼレンスキー大統領との首脳会談、共同記者会見を行い、ウクライナは健在であり、自由はかけがえのないもの、米国はウクライナが必要とする限り支援を続ける、ロシアは、ウクライナを地図上から消し去ろうとしている、しかし、ウクライナとの戦いに勝利することはないと発言している(注2)。

(注2:https://www.bbc.com/news/av/world-europe-64710795

 ウクライナ電撃訪問について、ニューヨーク・タイムズ紙(注3)が「バイデン大統領による戦争地域へのシューリアル(超現実的)な秘密行(Biden’s Surreal and Secretive Journey Into a War Zone)」と題する記事で電撃訪問の詳細を報じており、大変に興味深い。

 米軍が支配していない戦争地域へ、しかも長時間の列車移動を伴うことから、米大統領のウクライナ訪問はリスクが高すぎるとして、大統領側近は、ウクライナを訪問したいとの大統領の衝動に抗してきた。しかし、ロシア侵攻からほぼ1年が経過し、ウクライナ軍は当初予想をはるかに上回る活躍を見せていること、この間、欧州各国首脳や米高官・議会指導者らがウクライナを相次いで訪問していたことから、2月17日、バイデン大統領は、安全にウクライナに出入国できると決断した。

 当初予定されていた2月20日のバイデン大統領のポーランドへ向けての出発日の前日、2月19日未明、大統領は米国首都から秘密裡に移動した。大統領に同行するプレスは通信社と大手新聞の各1名、計2名に限定され、同行プレスには事前に秘密保持誓約書を提出させ、移動期間中の24時間、通信機器は預けさせ、通常の大統領専用機ではない米軍用機を使用して、独経由ポーランドに向かい、同国の空港から、車でウクライナ国境近くの駅まで移動し、片道9時間半の夜行列車を利用して、ウクライナ首都キーフに20日午前8時に到着した。

 首都では、ウクライナ軍戦没者の慰霊、首脳会談と共同記者会見などで約5時間滞在した後、同大統領は再び列車でポーランドへ移動した。同大統領のウクライナ滞在中は、米軍機がポーランド側国境近くで空中待機しており、また、サリバン安全保障担当補佐官は大統領がウクライナを訪問する直前にロシア側に連絡を入れて、ロシアのミサイルによる誤爆などを回避するオペレーションを行ったと報じ、黒色カーテンで覆った移動中の列車内での米大統領と側近との協議の場面の写真も併せ掲載している。

(注3:https://www.nytimes.com/2023/02/20/us/politics/biden-kyiv-ukraine.html?utm_source=GZERO+Daily&utm_campaign=03139501a9-EMAIL_CAMPAIGN_2023_02_22_12_02&utm_medium=email&utm_term=0_e605619869-03139501a9-[LIST_EMAIL_ID

 2月21日付WSJ紙電子版(注4)は、米大統領の電撃訪問は、世界の指導者たちが公的位置づけを重要視する時期に、極めて重要な外交活動であり、また、80歳の大統領が、来年の大統領選を念頭に、自国の聴衆に自らの活力をアピールする場となったと指摘する。ウクライナ大統領との共同記者会見では、ウクライナ国旗の青と黄色の色をあしらったストライプのネクタイを着用したバイデン大統領が、ウクライナの主権と独立に対する揺るぎない支持を誓ったと報じた。

 他方、同紙は、米国内の最近の世論調査結果で、ウクライナ支援に対する支持率が5割を切り、昨年5月時点の60%の高い支持率から減少したこと、又、米議会下院を支配する野党・共和党にウクライナ支援予算の見直しの動きがみられると報じた。

(注4:https://www.wsj.com/articles/president-biden-visits-ukraine-for-first-time-since-russias-invasion-30a7c8d3

 なお、バイデン大統領のウクライナ電撃訪問と同じ2月20日、岸田総理が、ウクライナ人道支援とインフラ復興へ55億ドルの追加支援を発表し、侵攻から1年となる2月24日にG7(先進7か国)首脳会議をオンラインで主催するとの発表をタイムズ誌(注5)が報じている。

(注5:https://time.com/6256941/biden-trip-kyiv-ukraine-zelensky/

ウクライナの抵抗、西側諸国の結束

 ロシア侵攻直後、首都キーフ周辺でのウクライナ側の果敢な抵抗に遭遇して、ロシア軍が撤退したことは、多くの人の記憶に鮮明であろう。その後、同国の東部・南部地域で、ウクライナ軍が西側諸国から供与された兵器も使用し、ロシア占領地域の一部を奪還し、ロシア占領地はウクライナ領土の約18%に減っている。

 この背景には、ロシア側がウクライナ軍事力の過小評価に基づいた作戦を実施したほか、ロシア側の現場指揮官は、モスクワの軍トップ(参謀総長)の命令に従っていた。他方、ウクライナ軍は米・英などから提供されるロシア軍動向に関するインテリジェンスも利用し、作戦行動し、現場指揮官は、戦況に応じて柔軟に対応したこと、また、首都に近いブチャなど都市で、ロシア軍撤退後に多数ウクライナ市民の虐殺が明らかになり、断固として自国領土を守ろうとするウクライナ人の決意と士気が極めて高いことを英米メディア各紙が度々報じている。

 ウクライナ首都が攻撃された直後、ゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディア(SNS)を利用して、首都キーフの街頭から、自らが健在であることをアピールし、ウクライナ国民の結束を呼びかけ、士気を鼓舞する動画を発信している。又、ロシアのミサイル攻撃にさらされた病院・学校・住宅など民間施設の現場からの映像がSNSに連日掲載され、同国の惨状は世界によく伝えられている。デジタル情報戦で、ロシアのフェイク情報に惑わされない効果があったと思われる。

 また、同大統領自らが、日本も含めて西側諸国の議会、NATO等首脳会議へオンラインで直接にウクライナへの支援を訴え続け、昨年12月には、戦時下のウクライナから米国をサプライズ訪問し、米議会に直接の支援要請を行った。EU首脳、NATO加盟国首脳らが首都キーフを度々訪問し、今回、米大統領の電撃訪問により、ウクライナ支援に向けた西側諸国の連携・結束は強固に見える。

対ロシア制裁措置の経済効果

 ウクライナ侵攻直後、50か国を超える西側諸国により対ロ経済制裁が実施された。同制裁の効果が限定的な理由について、英エコノミスト誌編集長らによる「戦時下のウクライナ、1年」の特集企画討論(注6)で、ロシア担当編集委員が指摘する以下2点は興味深い。

―(日本を含め)西側諸国によるロシアへの経済制裁の迅速な実施で、22年のロシア経済は、3-4%成長の前年から大幅に落込むと当初予測された(筆者注:IMFの昨年4月のロシア成長予測は、マイナス8.5%)。しかし、その後にロシア産石油・天然ガスなど国際エネルギー価格が大幅高騰した分が、ロシア国家予算への追加的歳入 (extra revenue)となり、その規模は、ロシアGDPの10%に相当する。他方、ロシアから国外へ逃避した大量の資本(capital flight)はGDPの12%を占め、2022年のロシア経済成長率はマイナス2%台(IMFの23年1月末公表予測値はマイナス2.2%)にとどまった。又、ロシア中央銀行総裁や財務・経済テクノクラート達はプーチン政権にとどまり、ロシア経済を支えていた。

―昨年後半にエネルギー価格が下落し、安定的に推移したため、昨年末から今年1月のロシア国家予算は厳しい状況にある。ウクライナでの戦闘によりロシア軍に著しい損失があったことから、兵器・人員など大幅補充が必要で、軍事費が国家予算に占める比率は急増する。今年23年中には、ロシア経済の危機が露わとなり、予測された成長率見通し0.2%(※2023年1月末時点のIMF予測)より、もっと厳しい状況となろう。

(注6 英エコノミスト2月27日Podcast 「Ukraine at war: one year on」は、同誌編集長、副編集長、軍事担当編集委員、ロシア担当編集委員による約60分の討論動画は、特に興味深く、御視聴をお薦めする。:https://youtu.be/wqxTo7oQX3Q Economist 2/27)

紛争の終結時期、民主主義に関する異なる見方

 SCMP紙が注目して取り上げていたが、ロシアのウクライナ侵攻から1年の時期に合わせて、欧州外交評議会(ECFR)と英オックスフォード大学が共同で、インターネットと対面方式でEU9か国、米・英・露・トルコ・インド・中国の計15か国を対象とした世論調査結果(注7)が発表された。同調査には、ロシアによるウクライナ侵攻をどう終結すべきか、また、民主主義に最も近い国はどこか、といったタイムリーな設問への回答結果があり、各国市民の間で問題意識・理解の顕著な違いがわかって興味深い。なお、同調査は2022年12月下旬から2023年1月上旬に実施され、回答者総数は19,765人。

―米・EU9か国・中・露・印の15か国世論調査―

(注7:https://ecfr.eu/publication/united-west-divided-from-the-rest-global-public-opinion-one-year-into-russias-war-on-ukraine/#methodology

・「早期停戦」か「勝利まで戦う」

 米・英・EU9か国の市民の間では、ウクライナが勝利し自国の領土を回復することで、プーチンとの戦争が終わるとの見方から、一刻も早い戦争終結を望みはするものの、紛争が長期化して、犠牲が増えてもウクライナが領土回復の実現まで戦うことを望むとの見方が最有力であった。

 各国別でみると、「戦争が長期化し、さらに多くの犠牲者があってもウクライナは占領された領土を奪還すべき」との考えに賛成したのは、英44%、EU9か国平均が38%、米が34%であり、インドとトルコは、各々30%、27%、中国は23%、ロシアは5%である。

 他方で、ウクライナがロシアに占領された領土を放棄することになっても、今すぐに戦争を終わるべき、との設問に賛成したのは、非西洋諸国の市民に多く、インド54%、トルコ48%、ロシア44%、中国42%であり、これに対してEU9か国は30%、英22%、米21%であった。

・「民主主義国家に最も近い国は?」

 民主主義国家に最も近い国はどこかとの問いに「自国だ」との答えた非西欧諸国の中で、中国が77%で突出して高く、次いでインド57%、トルコ36%、ロシア20%となっている。この結果から、民主主義の定義は、各国市民の間で異なることが分かる。議会制民主主義がアジアでは日本に次いで古く、世界最大の人口を有する民主主義国家と自負するインドは考慮すべき点もあろう。

 しかし、バイデン大統領が度々発言する「民主主義と専制主義とのとの闘い」との見方を、中国が受入れることがないのは、同回答からも明らかに感じる。なお、同調査での中国の対象市民は、北京や上海など4つの大都市のみである。

中国のロシア支援

 今年2月、王毅・中国共産党政治局委員(前外交部長)は、ミュンヘン安保会議に出席後、22日にロシアでプーチン大統領らと懇談し、両国の協力関係の強化を協議している。

 SCMP紙2月23日付け電子版(注8)は、ロシアのウクライナ侵攻後、初めてモスクワ入りした王毅・政治局委員は、中・露の戦略的協力を深める用意がある、両国関係は圧力に耐えて、第三者に揺るがされることはないと述べ、プーチン大統領からは、国際情勢の安定には、露・中協力が重要だと述べたこと、さらには習近平国家主席が今後数ヶ月内にロシアを訪問予定と報じている。

 同紙によれば、従来、ロシアへドローンや弾薬など供与していたのはイランであり、ロシアは中国からの武器支援を期待している。中国はこれまで航空機・兵器などの電子部品等を供給しており、本格的な武器の供与はまだしていないと米国は見ている。

 他方、プーチン政権が本当に苦境に落ち込み、ロシアが敗北する可能性が高まれば、中国が本格的に武器供与を開始し、戦局を変えてしまう可能性があると同紙は指摘する。

(注8:https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3211263/ukraine-1-year-chinese-want-war-end-soon-russia-remains-ally-and-partner-divided-world-poll-finds?module=storypackage&pgtype=sport

 バイデン政権は中国に対して、ロシアへ本格的に武器供与をすれば、制裁を行うとの牽制発言を公の場で繰り返し表明している。もし、中国がロシアへの本格的な軍事支援に踏み切れば、米国上空での中国の監視気球への対応を巡って悪化している米中関係の亀裂がさらに深まると思われる。

 WSJ紙2月21日社説記事(注9)は、「ウクライナ関する米国の選択(America’s choice in Ukraine)との見出し入りで、プーチン大統領は、ウクライナ領土の大部分を制圧し、ロシア帝国に併合する目標を少しも変えていない、同大統領がウクライナの降伏にこだわる限り、米欧諸国が交渉する用意があっても、応じないと指摘する。

 その上で、ウクライナが求めるロシア占領地域の奥深くへ攻撃ができる長距離ミサイル砲、F16ジェット戦闘機などの供与を米国が早める緊急性が増している。今後、中国がロシアへ本格的武器供与を始めると、ウクライナでの戦闘は激化し、あるいは、敗北しかねず、また、戦争長期化で米欧各国の支援が先細りして、敗北のリスクがさらに高まると指摘して、バイデン政権は、ウクライナが求める武器を躊躇せずに迅速に供与し、ロシアに決定的な打撃を与えるべきだと同紙は主張する。

 (注9:https://www.wsj.com/articles/ukraine-russia-vladimir-putin-weapons-u-s-biden-administration-pentagon-china-iran-7d968faa?mod=opinion_lead_pos1

 中国外務省は2月24日、ウェブサイトに「ウクライナ危機への政治的解決のための中国の立場」と題する12項目の和平案を掲載した(注10)。

(注10:https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/zxxx_662805/202302/t20230224_11030713.html

 同和平案は、ウクライナ占領地からのロシア軍撤退に触れず、対ロ制裁の停止を求めていて、バイデン大統領は、ロシアを利するだけの提案だと一蹴している。ゼレンスキー大統領は、2月24日の侵攻1周年の演説の中で、和平提案をした中国に対して、ロシアへの武器支援をしないと信じたいと述べた上で、この機会に習近平総書記との首脳会談を持ちたいと発言したものの、中国からの反応はないとBBC(注11)は報じている。

 (注11:https://www.bbc.com/news/world-europe-64762219

グローバル・サウスの見方

 SCMP紙2月23日電子版記事(注12)は、中国は、グローバル・サウスの代表として、ウクライナ和平提案を行い、平和国家として仲介する役割を果たそうとの姿勢を対外的に示す狙いがあると報じている。同紙は、アフリカ諸国の中には、ウクライナに軍事侵攻したロシアとウクライナを支援するNATO諸国が、破壊のために大量の資金を投入し続けているが、こうした資金は、途上国の発展のためにこそ使ってほしいとのアフリカからの見方を報じている。

 ウクライナ紛争により、食糧危機やエネルギー価格高騰に見舞われたアフリカなど非欧米諸国からすれば、西側諸国は、それ以外の世界(rest of the world)にとり本質的に重要な危機を放置している、ウクライナとシリアからの難民とでは差別的扱いがあり、西側諸国の偽善があるとの見方を報じている。

(注12:https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3211263/ukraine-1-year-chinese-want-war-end-soon-russia-remains-ally-and-partner-divided-world-poll-finds?module=storypackage&pgtype=sport

最後に

 英米メディア報道をみていると、2年目を迎えたウクライナ戦争の出口戦略は、いまだ見えず、今後、長期化するとの見方が有力であり、犠牲者はさらに増大しよう。主権と領土の保全をかけた戦いで西側諸国の支援を得たウクライナが勝利しなければ、世界の歴史は逆戻りしかねないと感じられる。

 戦争遂行のためロシア経済が疲弊しようと、プーチン大統領は、ウクライナの降伏とロシア併合に向けての継戦に強い意欲を示している。今後、中国はロシアへ本格的軍事支援に踏み切るのか、また、戦争が長期化する中で、米をはじめとする西側諸国がどこまでウクライナ支援で結束を続けられるのか不透明である。

 専制国家が勝利した場合は、アジアなど他地域でも専制国家による周辺地域への侵攻の可能性が心配される。ウクライナを巡る世界的リスクが当面は続き、不安を感じる人は、多いのではないだろうか。

(令和5年3月9日記)