余談雑談(第184回)ゴルフのルール


元駐タイ大使 恩田 宗

 春である。俳句に春の季語が300近くある。植物の部では「若草」が「土筆(つくし)」「桜」「菜の花」「桃の花」などにもまして待ちかねた春の息吹を強く感じさせる。ゴルファーなら息を吹き返した緑のコースに出かけ白球を思い切り遠くに飛ばしたくなる。

 ゴルフは小球(直径42.67ミリ以上のボール)をクラブ(伝統と習慣に従った形状と構造のもの、材質は別途規定)で約1~600メートルのコース(通常18ある)先端のホール(直径108ミリ)に入れるというゲームでクラブの使用回数の少なさで競う。守るべきルールは英国のセント・アンドリュウス・クラブ(R&A)と全米ゴルフ協会(USGA)が定めている。①使えるクラブは14本以下、②コースで使う球はホールに入るまで(限られた場合を除き)手足で動かさない、等である。簡単なル―ルの為現実のケース全てを処理できずそんな時は専門家に裁定して貰う。R&AとUSGAは世界中の裁定を総括し参考書として「ゴルフ規則のオフィシャル・ガイド」を毎年発行している。

 ゴルフ規則(ジェネラル・ルール)は4年毎に改定される。ゴルフ場や競技会が追加して定めるものはローカル・ルールと称しスコア・カードに掲載される。去年の日本女子オープンで韓国の全美貞が距離計を使い失格となった。距離計の使用はジェネラル・ルールで認められているが前記競技では禁止だったのである。距離計は20年前に認められた。ゴルフは距離推定の能力ではなく既知の距離を正確に打てるかで勝負すべきだとの理由からだった。競技者が正確な距離を知るため歩測などで多くの時間を使うのを止めさせゲームの進行を早める為でもあったらしい。

 以前東南アジアでは傘持ちとバッグ担ぎのキャディーを使っていた(ルールはキャディー1人に限定)。日本でもキャディー共用(4人にキャディーが2~3人)の場合自分のキャディーを決めず1人のキャディーからクラブを渡され他の1人にボールを拾って貰うなどという違反をよくしている。ゴルフはルール破りが行われ易い競技である。人に分らぬように球を足で動かすなど簡単にできる。球がゴルフ場外に出た(アウト・オブ・バウンズ)か、草むらに入った球があったのか、なども自分で現場に行っての自己申告である。距離計では土地の高低の測定は禁止であるがそれも競技相手を信用するしかない。紳士のゲームと言われる所以はそこにある。

 元日本ゴルフ協会規則委員亀井通夫氏(元伊藤忠専務取締役)から懇切なご教授を頂いた。諸外国の規則専門家と常時意見交換をしておられるという。厚く御礼申し上げる。